杉並の家づくり

家づくりは、続いてゆく

 竣工後、時を経て一年点検の時期がやって来た「杉並の家」。

開催間近い音楽会に向けて、防音の効果を高めて気兼ねなく過ごす場所を目指す。

今回も、気心の知れた友人の建具屋さんと棟梁の出番と相成ります。

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 サッシを二重にするため、運び入れたのですが、六ミリのシングル硝子でも十分重い。

普段、鉛筆より重いものを持たない?設計屋にはコタエます。

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 引き戸の隙間には、ピンチブロックの植毛パッキングをつけて調整。

音の出入りを注意深く防ぎながら、今までと何も変わらないように納める。

「防音」というとゴツく重くなりがちですが、あくまで住まいの延長。目立たず控えめに。

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 吊り戸の下端にはレールがないので、そこの隙間にも床の不陸に対応しつつ対処。

稲妻型に近い形状のパッキンで、音漏れを防ぐ効果のあるスグレモノです。

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 いろいろな諸条件をクリアーにし、よりよい居場所を創ってゆく。

杉並の家づくり、これからも続いていきます。

メンテナンスも設計仕事

 心地よい風が吹き、気持ちの良い朝、すこし曇りがちな心持で杉並の家へ向かいます。

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 水漏れがあった、との連絡をもらったので、すぐに棟梁と水道屋さんに連絡をとり、

現場へ。こういうことは、スピードが命です。心配事はすぐに解決してほしいのが人情。

自分のこととして受け止めて、すぐに対応する。基本中の基本。

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 棟梁が床の点検口を開けて、水を流して、その原因を突き止めてくれました。

洗濯機の排水口と水道管の接する部分に、隙間があってそこからの漏水でした。

 原因がわかって一安心。棟梁と顔を見合わせ「お願いしますよ~っ!」と笑う、

その先に恐縮する水道屋さん。犯人探しは無事終わって、あとは直すだけ。

水は正直に自然に流れていく。その摂理をないがしろにすると、しっぺ返しにあう。

お願いしますよ!!プロなんだから。

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 水道屋さんが材料を手配に行っている間、棟梁と一服。そこここに、お花が飾られて

すこしずつ住まいらしくなっているのが、なによりうれしいものです。

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 初夏の陽射しと青空の下。同じように気持ちが晴れて、いい待ち時間を過ごす。

こういう、微妙な「ご褒美」も、たまーにはあってもいいかな?

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 人が住むとは、どういうことが大切になるか。そういう原点を教わります。

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 照る日曇る日。いろいろあるから、家は安心の居場所であることが前提です。

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 手直しが無事終わって、事務所に戻り、一仕事終えてすっきり!

快晴の空の下、個人的打ち上げの買出しに出る、気持ちのよい夕暮れでした。

ビールの美味しいこと、この上なし、のめでたし日です。

手を尽くす、幸せ

 手を尽くしたその結果、芳しくないことになったとしても、その時は諦めがつきます。

ただ、それは自分が対象であればいいのですが、建築の設計はそうはいかない。

対象が大きくなれば、個人で出来ることの範疇を越えていきます。

 杉並の家づくりは、そのことを考えさせられる仕事になりました。

住まいをつくること。それは、テレビのコマーシャルで坪いくらの、話ではない。

それで済む人は、車と家を同じように考えることの出来る人です。

お金という、数字そのものが表わすことが出来るものを価値とするか、

その日で消えていく、人の想いが生み出す手仕事の、数字には決して置き換えられない、

そこのところを、捉えるか。もはや、こうして言葉にする以前に、言わなくても「わかる」。

 日本語に、テロップが流れるような日本。それを、不思議に思わない、感じられない人々

が増えてしまったのは、どうしてなのか?いろいろと、考えるこの頃です。

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 国家や貨幣は、実体のないもの。この「国」は、どこにもありはしません。

それより確かなのは、身のまわりの「実感」です。それも、人それぞれの、身の丈です。

 わたしたちが実感出来るのは、等身大の感覚。数値化なんぞ出来ないもの。

ネット上の、アクセス数が朝のワイドショーになりやすいネタであるのと、正反対のこと。

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 杉並の家づくり。物干しは、考えるまでもなく、こういう形をとります。

予算の出所はすでになく、でも「どうつくる?」の問いだけはあります。

 三センチの棒、二本とそれを受ける木。思いつきいう、信用する自分の直感を

かたちにしてくれる棟梁。両の手が「金棒」です。

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 カタログをどれだけ探したとしても、たとえお金を積んでも、出来ない素朴なタオル掛け。

棟梁の、両の手が生み出すものには、数字にならない「時」が宿ります。

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 たとえ既製品でも、配置の「妙」。これも、図面では高さを示しただけです。

どう、する?どんな人にも問われている、命題ですね。

 両手が、どう活躍出来るか。「手を尽くす」 この一言、今はよく判ります。

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 自分というものが、もしあったとして、「さて、誰がつくったのか?」。

やりとりの場

 六月は、初夏の陽射し。朝の光りが無言の励ましをくれる週明けです。

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 今日はこれから杉並の家へ。棟梁と手直しをしに行ってきます。

引渡しが終わったといっても、生活が始まるのはこれから。

わたしたちが携わった家づくりが、住まいへと成長していくのを見守る。

そんな親のような気持ちで、これからがスタートします。

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 杉並の家は、仕事場があるから、人とのやりとりが増えることが幸せのひとつ。

柔らかで自然な木の風合いが、そのやりとりを支えてくれますように。

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 玄関は人とのやりとりをし易いように、閉じすぎず、控えめにありたい。

通りとすこし距離を得て、すこし落ち着いた趣になってよかった。

 たとえ小さな家であっても、まちへとつながる場所が玄関。

おおげさに言えば、社会との接点でもあると思っているから、おろそかには出来ない。

すでにあったものを、素直に肯定して受け入れ、やりとりをして創った場所。

たくさんの職人さんとのやりとりから、うまれた場です。その真剣なやりとりからは、

つくる苦労を共にして、時に冗談をはさみながら、時間を共有した結果、

出来上がるなにかがあります。訪れる人々が、そのなにかをここち良さとして

わかってもらえたらいいなぁ。

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 窓辺は、外とのやりとりが自然に生まれる場所。

光りや風はもちろん、四季の温度と熱のやりとりをする場でもあります。

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 大きな窓の足元には、床の冷暖房の吹き出し口をつけて、暑さ寒さのやりとりをする。

あくまでさりげなく控えめに目立たぬように。住まいの設備は、シンプルがいちばんです。

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 住まいは、家族がたくさんのやりとりを営む場所。

いいやりとりが出来ますように。

居場所の手渡し

 ほぼ半年近くかかって、杉並の家が出来上がりました。無事引渡し、一安心します。

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 仕事場と住まいを、リフォームで両立させること。限られた広さとコストを

隅々まで使い切り、住まいの質を高めること。難しい課題が与えられました。

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 既にある部分を残しながら、新しく付け加える。出来る限り要素を減らしましたが、

要求される機能は満たさなければならない。なおかつ、そこによい佇まいが欲しい。

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 水廻りには明るさと使いやすさを加えて、日々の家事をする手助けになれば。

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 住まいを見通すことの出来るプラン、リフォームでもテーマにします。

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 すこしでも空間が広がるように、高さ方向にも抜けをつくります。

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 上下にも広がりをつくると同時に、空気を循環させるシステムを入れました。

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 キッチンもシンプルこのうえなく、家の中心に。

 住まいという、家族の居場所。丁寧につくったものを、手渡す日。

すこし寂しさがともなうのは、いつものことであります。よい、生活を。

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隅々と端々

 今回の杉並の家づくりは、細やかな摺り合わせが必要とされる現場でした。

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 白い引き戸と生成りの床、壁、天井のこの場所も、合計6枚の引き戸が合わさる場所。

壁の隅と引き戸の端が重なる場所は、たくさんの寸法の合わさる交差点でもあります。

 一から作る新築とは違って、既にある建物に手をいれない部分と、付け加える部分が

一緒になるために、余計に手間がかかります。微妙にずれている古い部分に、

修正を加えて、なおかつ、前より良く見えるように作る仕事が要求されます。

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 引き戸が動くためには、枠との間に隙間が要りますが、冬は隙間風も入ります。

なので、モヘアをつけて隙間風を防ぐ仕事が隅にあります。

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 引き戸が閉まる時に当たる立て枠も、へこませておけば隙間風が入りません。

錠がかかるには奥行きも必要ですし、ひとつひとつの寸法が合わさって、

この大きさの形が出来上がる。壁の隅は引き戸の端。

隅々まで神経を行き届かせて出来上がる物の端々。

今回は、材料と材料の取り合いを学ぶことが多かった。

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 Jパネルで作った階段も、靴箱を兼ねています。

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 穴に手をかけて手前に開けると

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 このように、結構入ります。1階がほとんど仕事場になったので、収納は

限られるスペースを有効利用して、隅々まで使い切ることを考えます。

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 玄関の土間のところも、ポストの受け口と深い奥行きの靴箱があって、

引き戸を閉めると隠れる寸法です。

 物を作ることで生まれる端っこは、隅々へとつながって、ひとつの住まいへ。

「端々を大切に」よくよく自分に言い聞かせる、そんな杉並の家づくりです。

人を迎える場所

 杉並の家づくり、ようやく竣工を迎えます。たくさんの職人さんの手によって出来ました。

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 玄関は人を迎える場所。以前の味気ない既製品のドアを外して新しく作ります。

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 友人の建具屋さんが製作してくれた木製の引き戸。ペアガラスの吊り戸、

ハンガーレールでスムースに動いてくれます。

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 手触りのよい木の建具。コストと手間がかかるから、今はみんな既製品。

それでも、木製にしない理由にはなりません。人を迎える場所だからこそ、

温かみがあり風合いのよい木製引き戸を使います。

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 もうひとつの玄関も同じ木製引き戸。こちらの方が背が高く製作も大変です。

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 人を迎える場所は、家族のおかえりを迎え、友人を迎える場所。

この場所がうまく出来れば、おのずと人が集まる場所になります。

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静的ビフォーアフター

 朝一で江戸川へ。土地区画整理の担当の方と携帯でお話しながら、消防署の出張所へ。

こちらは机の上で図面をみながら、顔をつき合わせての打合せ。担当の方は、穏やかで

けれども人命を守る消防の立場。厳しいまなざしで意見が出てきます。無事、一通り済み、

川を渡って駅へ戻って、杉並の家へ向かいます。

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 途中の空は気持ちよく、風もさわやかで「ごくろうさま」と労ってくれているようです。

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 そろそろ六月。その先は、川面に停泊する屋形船の季節ですね。

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 杉並の家づくりも最終コーナー。建具にガラスが入り照明が入り、だんだんと家らしく。

静かに進む、ビフォーアフターの時間です。

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 玄関は家の顔。人を迎える場であり、毎日の生活で「いってきます」と「おかえり」が

繰り返される場でもあります。優しく木の引き戸で、しっかりとペアガラス。

今回は商売繁盛も願う、そんな玄関になりました。

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 おりしも、建具の吊り込みで加工をしながら現場合わせの友人と、

床暖房のダクトを通す穴あけをする棟梁のコラボ。

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 結局、最後まで現場にいるのは私たち。家づくりは家守りでもあります。

拍子抜き、よい間をつくる

 朝一番、役所に朝駈けしたおかげで、すんなりと書類を受け付けてもらい、拍子抜け。

書類の山を切り崩すには、幸先よいスタートです。まだ先は長いけれど。

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 その足で、竣工間近の杉並の家へ。善福寺川沿いは、川面を過ぎる風が心地よい。

出来上がってしまうと、しばらくこの馴染んだ景色ともお別れです。

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 建具の吊り込みに友人が来てくれます。高校の同級生。

早、半世紀。まさか十六の時、この歳になって現場で一緒に仕事をしているなんて、

想像すらしていませんでした。そんな話も出る現場。和気藹々。

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 音楽室の天井に、気を使って手間をかけてスピーカーを埋め込んでもらいます。

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 新しく出来たバルコニー。北側だけれど、東側から朝日が入っています。

設計している時は、ここまで明るい場所になってくれるとは、思いませんでした。

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 間仕切りの引き戸。吊り戸なので、ハンガーレールを天井に埋め込んでもらいます。

合わせ目がぴったり。まるで新築のような仕上がりになりました。

現場には、優しい光りが差し込んでいて、ここまでの多くの職人さん方の苦労を

ねぎらうかのよう。

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 時々拍子抜けするくらいに力を抜き、ここぞというところで集中する。

そんな仕事のススメ方。この場所で、学ぶことが出来ました。

居場所の窓

 着工から五ヶ月が経ち、残材が片付けられて、仕上げ工事に入る杉並の家づくり。

床材を決めに現場に出かけてきました。ほぼ、下地の工事が出来上がって、部屋の形が

現われて、光の入り具合などがよくわかるようになります。

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 入り口脇のカウンターと机に間仕切りの薄い壁。ランバーコアという

ちいさな木を集成して、両面にシナの合板を張ってある材料で壁にします。

薄いから、スペースの広さをかせぐのによく使います。

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 イケアで買った本棚が絶妙に組み込まれた出窓。お向かいの家の緑が借景です。

光りが入り、風の抜ける窓のついた本棚。居心地が良いと思います。

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 新しく付け替えた階段の下。新しい書斎の窓の先も、お隣のお庭が借景でした。

造り付けの机と本棚。ここも居心地が良さそうな、いい光りが入ります。

 設計する時、図面という紙の上で考えていたことが、物に変わって、職人さん達の手を

経て、住まいの形になること。当たり前のようですが、時間と手間をかけてここまで。

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 間仕切りの引き戸が壁に当たる部分の「戸当たり」。床を下げたぶん、基礎が

出っ張るので、壁に段差がついています。きちんと断熱をしているゆえに、出る段差。

引き戸を閉めた時、明かりがもれないように、戸当たりにも段差がついています。

 丁寧に付け加えられた部分の集積。小説が推敲を重ねられて、よい文章になるように、

ひとつひとつの納まりが、居場所の居心地に参加して活きます。

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 現場を後にして、仙川へ。飲み会の時刻、その日の疲れを癒すような、

おつかれさまの夕日がきれいでした。

2018年10月
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