家づくり、住まいの設計には通るべき順序があります。現場で建設工事が始まるまで、
最初の打ち合せでお聞きした夢や要望、言葉にならない希望を汲み取ってする順序が。
いつもなるべく選択肢を用意して、夢の妨げにならないように提案をするようにします。
「これしかない!」と一つだけ出す人もいるようですが、その案が一番いいとクライアント
が分かる保障はありませんから。一刀両断で決められるほど住まいをかたちにするのは
単純な作業ではなく、からみあうパズルを根気よく解いて答えを出すものです。
鵠沼の家、ありがたいことに二軒目の設計依頼をいただき、張り切って始めた設計。
手を動かし浮かんできたおぼろげな三つの方向性を、要望に沿ってかたちにしたABC。
それぞれの案には、予算や使い方、もちろんそれに応じたかたちに特徴があります。
左のA案はオーソドックス。真ん中B案はL字形の大きめ案。右のC案は広がりを
テーマにした目立つ案。A案は普段着のシンプルを、B案はゆとりをもった重ね着に、
C案はかたちを追った服。判り易く言うとそんなイメージになります。
三つの提案をひとつずつ、メリット、デメリット、それぞれの特徴やなぜこのかたちに
したか、丁寧に説明していき、結果C案が一番気に入っていただきました。
ただ、まだ決め手というより、検討すべき「まだ見ぬ方向性」はあるので、次の三案を
また探ることにして、打ち合わせを進めることになります。
さて、基本形の方向は同じですが、検討の精度を上げてまとまりをつけていきます。
左のD案はシンプルの追求をして三間角の片流れ屋根、中央E案はL字をコンパクトに
五角形にまとめた案、そして右のF案は三角形にこだわって広がりを持つ案。
設計者がここまで考えてくるのと同じように、クライアントの方々も家族で議論され
すこしずつ方向性が見えてきます。ここではまだ「取捨選択」をするというより、その前に
可能性を出し尽くす。そんな気持ちを持って、また次の打ち合わせに進みます。
D案は、今振り返ると実現した案にもっとも近い案です。
土間とそこから上がった間がある基本形が、実際に建った家まで引き継がれることに。
後から振り返ると、ここに全ての始まりはあったのかなとも思います。
E案は、この時に探っていた店舗としての使われ方も検討した選択肢の一つです。
ちいさなカフェにもなりうる「楽しさ」さえ内包できていますね。
こういう案も、いつか実現できたらサイコー!だと思います。
F案は、気に入っていただいた三角形。なんとか良いものにしようとした案です。
ただ、当初意図していた広がりは、すこし大きな「かたち」に無理があって、
望まれている暮らしとの ずれ を感じるようになってきた案です。
さて、ここまで来るうちにあーでもないこーでもないとスケッチしては消えていった無数の
かたちたち。その生み出されなかったかたちの多さが、結局は最終形のエッセンスに
なっていることは確かです。出来上がったかたちのシンプルさ。は、たくさんの検討が
なされた後だから納得していただいて住まいのかたちになったと言えます。
次回は、この続きを。
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