住まい・インテリア

柔らかさを生み出す芯

 五感の中で、触覚は一番表わすのが難しいものです。

特に建築をつくるとき、実物は建物という「物」ですから、

ある程度「固い」もの。さあ、そこでどうやって「柔らかさ」を

出したらいいものだろうか。よくよく考えることになります。

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 以前訪れた敷地のお隣に、ある建築家の設計した家がありました。

彼のつくる家は武士のような佇まい。コンクリート打ち放しの固さとは

別に、設計の過程や意図が整然として、筋が一本通っているようです。

 考えに「芯」があって、それが全体を通して効いているかたち。

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 さて、自分の設計は、と振り返ってみると、どうもそこに「やわらかさ」

を求めているようです。手が触るところが木なのは当然として、

見た目にも「柔らかさ」を出すにはどうしたらよいのか。

相手は固い物としての建築です。クライアントという相手の要望を

叶えつつ、固い建築相手に考える「やわらかさ」。

 大根をむいて「面をとる」ように、建築も出来ればいいのですが。

大地に建つ建築の難しさ。そんなところにもあります。

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 我が家の娘は、性格は別として「やわらか」です。

なんとなく、全体が丸っこい。それが女性を表わすなら、

私が求めているのは「建築」?「女性」?どっち?

隅々まで瑞瑞しく

 私たちが創る住まいは、「暮らしの器」であると考えています。

ハウスメーカーのつくる、「商品」としてのハウスではありません。

売り買いの対象としての「~LDK/~㎡」の金額の札がついた

「物件」でもありません。

生身の人間が、そこで毎日の暮らしを営む、居場所としての「器」

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 人にも「器」があるように、暮らしを入れる器としての

住まいは、どのようなかたちであるべきか、考える仕事。

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 日本の四季にあった住まいのかたちは、さりげないもの。

そう思い始めてから、単純なかたちを心がけるようになりました。

木組みに塗り壁の住まい。壁と天井がつながる、塗り壁の白。

なにも目に障らない、かたちがあります。

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 端正でありたい。骨格はしっかりと暮らしを支え、仕上がりは

柔らかく、さりげないもので表わしたい。すこしずつ、

スタンダードな定番が、設計にも出来てきます。

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 建築は「普通」で、人々の暮らしが引き立てばそれでいい。

目立つ形で主張しなくても、建築は設計を「語る」ものです。

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 住まいをかたちづくる素材も生成りのまま。

素材同士が、自然に出会うことで、ある空間が出来上がる。

 床、壁、天井が合わさる場所には「納まり」があります。

違う素材ならば、どう合わせるか。同じ素材なら、どう繋ぐか。

はしがただしい端正は、隅々まで神経を行き渡らせた

結果が、自然に現われるものかもしれません。

 住まいが、隅々まで活き活きとして、瑞瑞しくあれば

「器」としての住まいは、成功でしょう。

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 人の手で創られた器。端正でありますように。

椅子・テーブルのデザイン

 設計屋稼業、世知辛い世の中ですが、デザインをするのはセンスです。

以前カメラのTVCMで伊武雅刀さんが、「あとは撮る人のセンスでしょう!ガハハハ!」

ってのがあって大好きでした。つまるところ、かたちを創るのはセンス。

センスの良さは誰が見ても伝わりますし、ダサいものはダ・サ・い。

 身体に身近な椅子などは、その最たるもの。座った時、人はだれでも

その良し悪しを即座に判断します。カラダは本当に正直です。

 以前ありがたいことにレストランの設計で、建物ばかりではなく、

椅子やテーブル、ロゴからコースター、店名のサインまで

全てを任せてくださった仕事があります。

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 まずは、要望に沿ってイメージをスケッチ。キレイなかたちに

なるまで、トレーシングペーパーを丸めてはポイの繰り返し。

ウェグナーのYチェアに座りながら、何度も寸法を確かめながら

かたちを練っていきました。

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 その後、今度は原寸、実物大の大きさの図面を起こし

Rアール(角のまるいところ)の大きさなども検討します。

テーブルには、女性のハンドバックがおける楕円の棚が

甲板の下についています。

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 当時の図面は、すべて手書き。書いては消しゴムで消し

また書いての繰り返し。手書きのリズムは、アタマと手先が

連動して、ものづくりには最適だと思います。

 今の人は、最初からコンピューターだから、その辺が

どうなのか、出来たものがよければそれでいいのですが。

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 テーブルの高さ、日本人は食事をゆったりする時、

肘をテーブルや椅子に乗せるから、その高さを揃えて

床から68センチ。机の高さはJIS規格で70センチだから

それより低めにデザインしました。たった2センチの差、

ですがその差はとても大きく使い心地を左右します。

 この高さを揃える意味は、もうひとつあって、部屋が

より広く見えるのです。大人数で座るのに並べた時、

テーブルと椅子のラインがすーっと通るから。

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 日本のヤマザクラの木で秋田木工さんに作ってもらったので

最高の座り心地です。

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 バーカウンターの椅子は、肘掛のないかたちです。

 特注でも、一脚一万円札が10枚にはならないお値段。

永く使って愛着もわくよう、センスが問われる設計屋です。 

季節に寄り添う家

 設計屋のホームページ、自分で作り始めてようやくやる気になってきました。

去年の秋口にドメインを取ってもう四ヶ月。億劫がっていたのは、余裕がないことの隠れ蓑。

やり始めてみれば、かける時間というものは、出来てしまうもので、世の中万事まずは

やってみなはれ、ということですね。

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 デジカメの時代になって、撮るのも気軽になり枚数も厖大で、撮った記憶がないものも

多くなります。上↑の我が家の写真もなんで撮ったのか覚えていません。

けれど、親亀の上に小亀(下が両親、上が私たち)が乗ったアングルは、設計の意図を

うまく表わしていて、使えそうです。自分って、結構エライ。

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 谷戸の我が家は見上げると、季節ごとに山の表情が移り変わっていきます。

春には、山桜が満開になって、五月晴れには緑濃く。

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 秋には紅葉が楽しめる家に、自然がそうしてくれました。

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 これで、これから雪でも降れば四季折々の風情が並びます。

 住まいを設計することは、自然の移ろいに寄り添うことでもありました。

どんなことからでも、自分がやり始めれば学べるものですね。

 よい、週中を。すこしリラックスして。

天井は語る

 日本の建築で重要なのは屋根です。雨が多く、しとしとからざんざん降りまで。

夏は陽射しが強く、ここ数年の猛暑の下では、屋根そのものを二重にして熱気を

逃がさないことには、街中では住めなくなってきました。

 住まいの歴史は、屋根と床そして壁の順で、作られ進化して、最後に張られるように

なったのが天井です。平らな天井が張られるようになったのは、武家社会が落ち着き、

江戸のお屋敷に座敷が出来て、の順番です。

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 時代は変わって、私たちの設計する家は、天井裏がなくなりました。

平らな天井もありますが、屋根の勾配なりの構造がリズムを刻むのが好みです。

 この並ぶリズムこそ、繰り返しのデザイン。構造力学から求められる大きさを、

強度を損なわず、なるべく最小に軽くしたいのです。

 我が家のロフトは、それでも木の間を白くしたかったので、ボードを打ち上げペンキ塗。

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 それから十数年。今は、構造合板の木目そのままに、正直なデザインが好くなりました。

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 夏の陽射しや西日を遮る屋根は、長く伸びた軒先と軒裏を表わしにして見上げる。

空の色と、木の色。季節や光り、空模様や時間によって、様々な表情を見せます。

 窓先に緑が増えれば、より豊かに光りと翳りの場所になります。

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 天井のことを書くきっかけは、マンションの現場から送られてきたこの写真。

壁紙の貼られる前の味気なさ。は、集合住宅の屋根がコンクリートで平らなことから、

すでに始まっています。かといって、平らな白い天井が悪いわけではなく、

いろいろな住まいがあっていいのです。

 住まいに何を求めるか。コストや便利さ、シンプルの方向性などは、人それぞれ。

住まい手の好み、というより設計屋の「こうしたい」を、天井が語るようですね。

労多ければ実り多き家づくり

 ほぼ一年をかけて設計監理をして、年末に無事引渡しを終えた鵠沼の家づくり。

設計の仕事を生業にして四半世紀を過ぎて、経験を積んだ気になっていた私たちに、

改めて、一軒の住まいをつくることの、難しさそして楽しさを教えてくれました。

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 一昨年の暮れ、以前設計した家に住まわれている方から、お子さんたちの暮らす家の

リフォームの依頼を受けました。同じクライアントから、再び依頼を受ける。そのことは、

設計の仕事に信頼があって頼まれていることの証です。独立してからの、夢のひとつが

かなったことでもありました。その後、設計を進め始めた矢先、また連絡をいただき、

ご両親から二軒目の家づくりを依頼されました。

 諸事情があって、偶然にも同じ方から三軒目の依頼。あまりにうれしい出来事に、

反面、責任の重さを感じてもおりました。

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 最初に提示したA案が、K案まで10を数えたにもかかわらず実現した家に最も近いこと

に、いまさらながら驚く私たち。同じ日には、もう一つのリフォーム案も出来上がり、

二軒分の仕事を同時に提示することにもなりました。

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 後にも先にも、こんな風に進むことは、そんなにないでしょうが、やってみると相乗効果

って、やっぱりあるみたいです。責任の重さが、そのぶん、ぐぐっとかかって、より遠くへ

と飛べた感があります。仕事とは、やってみるもの、ですね。

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 設計とは、その規模の大小にかかわらず、ある密度が必ず要るものです。

小さければ小さいほど、物づくりの基本に立ち返り、自分たちの仕事の進め方に問い、

繰り返し前進し、時には、振り出しに戻って、そしてかたちにしてゆく。

 労が多いほど、実ったものが多いこと。クライアントから「気に入りました」との言葉を

いただいて、充実という言葉の意味を実感する、今年の幕開けとなりました。

 週明けから、杉並の家づくりが始まります。鵠沼の家づくりから杉並の家づくりへと

同じ棟梁の手で仕事が続くのは、安心と信頼あればこそ。仕事の楽しさ、労多くして。

 

聖なる朝とメンテナンス

 いつもより一時間遅く出た散歩、次第に明るくなる空と歩調を合わせて海へ。

雲のひろがりと澄んだ冷気が、聖なる静けさを引き立てる朝です。

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 冬至を過ぎたから、一日の明るい時間は少しずつ長くなっていく。

そのことを教えるような、そんな明るさが感じられるイブの朝焼けのひととき。

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 年中クリスマスと正月のように恵まれている↓のが一匹いますね。

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 師走など、どこ吹く風のマイペース。すこしは飼い主に感謝しろよな。

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 今宵はお隣のご夫婦をお招きしてのクリスマス会。破けた障子を張り替えて、

みっともなさをすこしでも減らしましょう。普通の大きさの障子ではないので、

二枚を継いで張ります。障子の桟も普通なら一寸角(3センチ角)ほどですが、そこは

設計屋の住まい、周囲は見込み(奥行き)八分(24ミリ)見付け(正面)は六分(18ミリ)

の細さ。紙を張らないと、へなっとなるほど華奢です。そのかわり、見た目がきれい。

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 素人でもなんとか仕上がる障子張り。和紙の力は偉大なり。乾いたのち、

霧吹きすればピンとなる。華奢なフレームが和紙のテンションで成り立つ佇まい。

これからも、障子を設計し続ける理由がここにあります。

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 街中のリースも今日明日。週明けには、もう大晦日が待っています。

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 消防署の花壇、繰り返し咲くマーガレットの白さと、我が家の障子の白い清清しさ。

今年も静かなクリスマス。過ごせることに感謝して。

センスのプロポーション

 今週は、師走仕事の山場です。お役所仕事をさっさと済まし、のんびり冬休みを取る!

べく、目指す一週間を過ごすのです。決意しているんです。

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 プロポーションがいい、は女性に対してのほめ言葉ですが、建築にもあります。

近代美術館の鉄骨の柱は、無骨ではなく、あくまでスレンダーにすっくと建っています。

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 夏の間繁っていた蓮池も、綺麗にされて、青空を映す水面。

そのお池に、華奢ですが意志を持って建つ凛凛しい鉄柱。

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 設計者の持つ、プロポーションに対するセンスが垣間見られます。

物のない1950年代だからこそ、厳しいデザインがされて生み出されたかたち。

プロポーションという言葉には、ある種の緊張感も必要です。

 翻って、物づくりをする己のプロポーション。姿勢が問われる今週でもあります。

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 いい師走いいお天気。よい、一週間を。sunsunsun

ペリアン近美現場の日

 皆既月食明け、お月さまが妙に明るく感じられる日曜の夜明け前です。

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 昨日は、鎌倉の近代美術館で行われているシャルロット・ペリアン展の見学会。

展覧会の企画をされている学芸員の方のお話を聞く、貴重な時間をいただきました。

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 私が生まれる以前から、この場所に建っていたこの美術館。

いついっても、静謐な佇まいが迎えてくれます。

 今回は、おまけにこの中庭に、ペリアンとコルビジェの椅子が置かれていて

寝そべることまで!出来ます。ぜひぜひ、行ってQ。

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 その足で鵠沼の現場へ。大工仕事もほぼ終わり、これから左官屋さんの出番です。

暗くなった現場で棟梁と談笑。ものづくりの楽しさを、ホット缶コーヒーとともに味わう

冬の季節です。帰り際、鵠沼駅から江ノ島のライトアップを眺めて、ご苦労さんの一日に。

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仕事展2011

 今週10日木曜日から13日、日曜日まで、鎌倉駅前の鎌倉生涯学習センターで

「鎌倉の建築士 仕事展2011」が開催されます。

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 今年も、お誘いを受けて、以前の仕事を展示参加することになりました。

鎌倉らしさ、観光に来られる方はなにかイメージがおありかと思いますが、

私たちは、自分たちらしい、素直に環境に寄り添う家を提案しています。

 古都鎌倉は、奈良、京都とともに、古都保存法の対象地区であり、風致地区の指定も

広範囲に渡っています。ただ、その環境も相続にともなって、小さな区画割のミニ開発が

増えてだんだんと「鎌倉らしさ」が失われつつあります。

 鎌倉に限らず、その土地ごとに固有の雰囲気がある日本の街並み。

少なくとも、私たちの手がけるものは、その土地らしさを少しでも残したいと思いながら

日々精進しております。鎌倉散策のおり、どうぞお立ち寄りください。

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