住まい・インテリア

細部に宿る神々

建築の設計は、納まりをつける仕事です。筋を通す意志、見通す骨格を持った物語。

まさしく、物が語りだすかのように、創られた数々の名だたる建築は、

時に失敗してうなだれている設計者に、無言の励ましを与えてくれます。

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 スペイン、バルセロナにある、アントニオ・ガウディー作の、グエル公園にある

守衛さんの休憩所。その鰐の口のような窓辺と、そこに嵌まった鉄の格子を、

わたしたちは、設計で壁を感じたとき、いつも思い出します。

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 タイルを、細かく割って、なめらかに曲線を作り出した窓の縁と、

その中に、薄い鉄のプレートをねじりん棒のように曲げて、たてよこに

リベット(鋲)で留めた窓格子。決して、パソコンの画面の上からは、生まれ出ない形でした。

 どれほどの、作り手たちの手が動いた末の、このかたちが、この世に在ること。

 「細部に宿る神」がいるというより、「神」とともに在った建築家と職人が創りだした

おとぎ話のような、物語でしょう。すこしでも、近づけますように。

 

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午睡の窓

夏の、暑さ疲れ。今年は、誰もが感じていると思うのですが、いかがでしょう。

その、疲れをとるには、お昼寝もひとつの手ですね。

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 我が家の寝室は、北側にあって二つの対称的な窓があります。

片方は、四角く低い位置に、もうひとつ私の側にあるのが、天井までの縦長の窓。

この窓は、内側に上げ下げの障子が嵌まっていまして、好きな位置に止められる様です。

 斜めの天井、低いほうは1メートル90センチほどですが、寝る場所で、横たわるので、

もっと低くても良かったくらいです。地面から30センチほどしか上がっていないこの窓は、

北側の、涼しい風が吹き抜けていく、極楽の窓です。この奥には、お隣の家の後ろに、

建長寺手前からのトンネルがあって、そこの空気は冷えています。

そこから、廻りまわって、我が家にも吹いてくれる、心地よい風が入る。

 うとうと夢見心地のあと、冷えたアイスコーヒーなど飲みつつ、またゴロゴロ。

居場所の、心地よさは、窓のあり方に左右されるという一例でした。よい、午睡を。

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瓦屋根のリユース

環境の面から、よく言われる3R「リユース、リデュース、リサイクル」のうち、設計屋が貢献

出来る分野は、リデュースとリユースです。もちろん、随分以前から、コンクリートの下に

敷く石には、コンクリートガラから作られる、再生砕石(さいせき・くだいた石)を使って

リサイクルはしておりました。ただ、リサイクルというのは、廻すだけなので、すでにある

ものをそこに置くだけで、環境への負荷は変わりません。そこで、使う材料を抑制する

リデュースと、そこで使われていた材料を、そこでまた使うリユースを考えます。

リサイクルには、廻す手間、運ぶ手間がかかり、運ぶには化石燃料がかかります。

昔から、家を建てる現場の、掘った土を壁に塗る、リユースを日本人はしていました。

その式でいくと、建て替えの時、すでにその古い家の屋根材としてあった、瓦と銅板を

その場に外して取って置き、また使うのは、当然の成り行きではありました。

 あらかじめ、使う材料を少なくするリデュースは、設計屋の当然の義務なので置いておき

リユースの光景をお見せしましょう。

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 昔から、耐久性のある屋根といえば、瓦と銅板です。長持ちが前提のお寺の屋根に

どちらも使われていることからもわかる、日本の雨の多い気候に合った材料です。

 その瓦と銅板を、解体前に丁寧に外して、とって置きます。このとき、とって置く場所が

ないとどこかへ運び出さなければなりません。が、幸いこの現場は敷地に余裕があって

下から上への移動だけですみました。

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 外した銅板は、また丁寧に折り曲げて屋根に葺きます。まだ、材料が高く職人さん方の

手間賃が安かったころは、当たり前の光景だったはずですが、材料が大量生産され、

人件費が高くなった現代では、屋根屋さんの親方から、新しい材料で始めっからやった

ほうが、楽だし綺麗だし早いし、と至極まっとうな返事が返ってきました。

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 瓦も焼きもので、工場製品といっても、大きさにばらつきがあり、古いものと新しいもの

の風合いも違います。以前に使われていた瓦に、広くなった屋根に新しい瓦を足して葺く。

職人さんが、瓦一枚ごと、按配を見ながら新旧混合で葺かれた屋根。以前から

あったかのように、出来上がりました。↓屋根の棟の黒い部分は、屋根裏の熱を逃がす

蜂の巣状の換気口です。もちろん、空気は出ていきますが、雨水は入らない優れもの。

古いものに新しいものを加えるには、材料だけではなく、現代の新しい技術を加えること。

 時代が求める、環境の流れを、一歩ずつ実践する、設計屋の仕事です。

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 たった一軒の家で、材料をまた使ったからといって、環境に良いことをしたとは

とても思いませんし、言えることでもないけれど、やってみて、声高に3Rを叫ぶには

大きな社会全体で、細かく廻る循環の輪が、足りないのが、今現在です。

 千里の道も一歩から。まず、やってみ。

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月を眺める窓辺

夕べは満月でした。今年は昼間が暑いぶん、夜が待ち遠しい毎日です。

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 月が満ちる前の十三夜ぐらいが、より明るい気がしますが、この季節の我が家の窓から

昇っていく月を眺めます。夕方の散歩を終え、居間のソファに寄りかかると、ちょうどその先

に、明るくやわらかく輝く、まん丸一歩前の月。ひぐらしの声と、寄り添う風景です。

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 家の窓、年に数回しか全開にしなくても(蚊や虫が多いので)、壁に引き込む建具は、

気持ちのよいものです。限られたコストの中でも、手間をかけて、いい窓辺を作ること。

いつも、いつも考えています。

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見えないものこそ大事

空き地だった場所に、家が建つと地面は見えなくなります。

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人の足裏の大きさの、靴の下には何万もの微生物がいる。その上に建てる家は、

その限りない生命の上に成り立つことを、覚えていたいものです。

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 そして、工事の過程で見えていた骨組みは、床や壁、天井に屋根が架かって

見えないものとなります。居場所の骨格は、だからこそ大事な財産です。

 家のプランも、その中を歩いて見なければ、体感できないもの。

図では見えても、空からは俯瞰できず、思い浮かべることしか方法はありません。

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 設計で図面に表した家のかたちを、絵に描いた餅ではない、人の住まいに変えるのは、

たくさんの職人さん方の手です。手の痕跡は、そこには残りません。職人さんたちが

汗水流したことも、夢のように消えていきました。

 なにもなかった空き地に、職人さんが動いては消えたあとに、建ち現れる住まいという

存在。懸命な人を、どこかで誰かが見つめているように、見えないものこそ、意識する

感覚をもっていたいなあ。「みっともない」「はしたない」「野暮」他者の視点を失いつつある

日本の、これからの家に、必要な感覚に通じるような、願いでした。

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記憶を継ぐかたち

降ったり止んだりの、らしい天気の中、海ではいい波が立って波乗りが気持ちよさそう。

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 海の家の、日よけブリーズソレイユが白くパタパタとたなびいていました。

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 先日、我が家の門扉、下枠が腐って抜け落ちてしまいました。十年ちょっともったので

雨ざらしのなか、よくやったといえるのでしょう。材料は、米松でしたので、今回は桧にて

作り直します。鏡板かがみいたと呼ばれる格子の面は、再使用します。

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 なぜなら、以前の祖父が建てた家の建具だったから。

大工だった祖父が文字通り建てたその家の、物入やご不浄の戸だった板を、とっておき

建て直しの時に、それにあわせて、新しくデザインして使いました。

↓わずか9ミリ角の縦材に、横材が貫ぬきとして、貫通しています。

構造であるとともに、縦横の格子がデザインにもなっているのでした。

材料より、手間が易かった時代の、手間のかかった仕事です。

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 祖父の残した形見のような戸は、仕事場の入り口にも、再び使われていました。

そのままの大きさに合わせて、ハンガーの金物を使って、カーテンのように吊ってあります

高さ五尺七寸およそ1メートル73センチの昔の定尺ていじゃく寸法は、私の背丈には

ちょうどよい按配です。

 このようにして、百年の単位で、世代を超えて、残る建具に、記憶を重ねることが

出来る、設計という仕事は、天職であると思っています。

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トップライトの効き目

梅雨間の晴れ間、澄んだ空から明るさが降りてきます。その明るさを享受するのが、

天窓ということになります。

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 我が家の北側にある屋根は、一部をガラスの波板にしてあって、そこから

照明ボックス兼用のトップライトを透して洗面所に光りを落とします。

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 その下に、和紙調の風合いをもった、アクリルのワーロンシートをはめることで、

柔らかな光りとなって、手元を照らしてくれます。夕方まで、照明いらずの天空ライト。

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 我が家では↑左側の洗面所と、右側の廊下、そして欄間のガラスを透して、

その奥のトイレにも光りをおとす、一石三鳥の効果をねらっています。

 壁にある窓に比べて、三倍の明るさがあるとされる、天窓は、雨漏りの危険さえ

設計の良さで取り除けば、このうえない効き目と魅力があります。

 枠にパタっとはめ込んだアクリルを、時々拭き掃除するだけのメンテナンスで、

梅雨の季節も一定の明るさを与えてくれる、我が家のトップライト。

 設計の妙、自画自賛する、毎日でもあります。よい、一週間を。

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雲の上の家

無事に出来上がった設計コンペ案。一足お先に公開です。

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 オーナー住戸とオフィス、それに賃貸住宅の複合ビルディングです。

山に登ると、目の前を低い雲がたなびいていくことがありますが、そんなイメージで

空中庭園をつくりました。ビルの谷間の、空中のオアシスになればいいな。

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 建築は、たとえ小さな小屋であっても、社会的なものです。

どこに建つのであれ、経済的な行為である以上、責任も伴います。

理想を追い求め、夢のような空間を実現するのが、本筋でしょう。

 でも、いつの世も、出来るだけ効率よく、手間をかけず、少ない材料と価格でつくること、

が大前提です。与えられた土地の、すみずみまで、無駄なく、無理なく使って、

より経済的に、よりよい居心地の住まいを創ること。そうして出来たかたちが、

最終的に「うつくしいもの」であって欲しい。これが、わたしたちの願いであり、仕事です。

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 今回の要望の中に、パリのアパルトマンのイメージがありました。

そんなに、追求していた訳でもなく、複雑かつ大きな全体をまとめることにかまけて

いましたが、結果的には↑すこしレトロな、「いい感じ」になってくれました。

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 出来の良い、子供のようです。

 ひと段落して、今日から、また次の仕事にとりかかります。

来週からにしようかな。よい、週末と七月を。

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敷地と仲良く

予報より雨が降って、犬散歩はおあずけとしました。庭の紫陽花がうれしそうです。

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 設計コンペの〆切りを控えて、張り切る日曜日となりました。

今回は、集合住宅なので、いかにボリュームを確保するか、に腐心しています。

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 建築をつくる時、高さが高くなると、敷地の前の道路の巾や地域によって、

斜線制限というものがかかります。その見えない、斜めの線によって、建物の上部が

カットされるのですが、建築法規がかわって「天空図」を使えば従来より大きなボリュームで

建てられるようになりました。ソフトで、ボリュームの外形は得られますが、さてその中身を

考えるのは、わたしたち設計屋です。機械には最適解を「決める」ことは出来ないので。

 集合住宅であっても、一軒一軒の家を創りこむことに、なんら変わりはありません。

むしろ、問題が複雑になるので、より設計者の「腕の見せ所」になって「やったるで」と

モチベーションが上がります。敷地の条件に寄り添って、法規と仲良くして、

よりよい建築を目指すのは、やりがいのある仕事でありました。よい、休日を。

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臨機に応変

設計の仕事を考える時、外側からか内側からか、どちらから掘り進むか?

人それぞれアプローチの仕方が違いますし、そこに個性も出ます。

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 わたしたちの場合は、まず外堀を埋めてから、内部を膨らませて外側を見回す。

といった順番でしょうか。この場合の外側は、敷地の持つ潜在的なものを読み込むこと。

 外側からは、社会と法規の規制もかかってきます。複雑な、行政システムや毎年変わり、

増える法規制。その対応を考えるだけで、日本の社会的な損失は大きいと思います。

 サッカーを見ていると、対応するには、シンプルな臨機応変のシステムがいるようです。

どれだけ、その場その場で、応じて変わることが出来るか。(その場しのぎでもいい。)

 それには、複雑な動きを統率するシンプルな考えがいるように、生活を支える住まいにも

本筋を見通す、芯のようなものが要ります。

 インとアウト、インテリアとエクステリア、インプットからアウトプットまでを貫くのは、

結局単純な「人間のチカラ」に他ならないようです。

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